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神無月(10月)の法話☆

 「間に合って良かった・・

     また、お浄土で会おうね。」 田中 千尋

 

 

4年前のある夏の日、チーちゃんは突然お寺にやって来ました。

私の顔を見るなり大粒の涙を流し、

「これを真生さんに渡して下さい。」

と自分の連絡先を記したメモを差し出しました。

 

真生さんとは、岐阜に住む私の法友の名前です。

チーちゃんは34才。末期の乳がんで、

その時、余命3ヶ月を告げられていました。

その限られた時間の中で、

彼女は必死に生まれてきた意味と

死んでいく意味を探していました。

 

私も同じ乳がんだと告げると

「死ぬのが怖い…」と泣きました。

そして、この恐怖を支えてくれる誰かに側にいてほしいと・・

彼女には優しいご主人がいましたが、

死の話は悲しむからできないと言いました。

 

たまたま、大好きな歌手をネットで検索中に繋がった

真生さんのブログを読んで、

僧侶だとは知らずに「この人だ」と直感したそうです。

そして、会いたい一心で、

話の内容から東京に住む私を訪ねてきたのです。

 

本当に不思議なご縁です。

彼女は人生の最期に仏縁に出遇ったのです。

私は阿弥陀如来という仏さまが

 

「大丈夫。必ず救うから任せなさい」と

今、チーちゃんを抱きしめているから何も怖くないよ。

そのお慈悲の温くもりに出遇ったものは、

必ず、お浄土に生まれていくからね。

また、会える世界が待っているから安心してね。

 

と伝えました。

 

十月の初め、真生さんがチーちゃんと一緒にその歌手の

コンサートに行くために私のお寺に泊まりました。

2人は文通やメールですっかり親友になっていましたが、

これが初対面となるはずでした。

 

しかし、チーちゃんは直前に入院。

彼女は千葉の病院までお見舞いに行きました。

そこで2人は抱き合い、贈り物を交換し、

たくさんおしゃべりをして笑ったそうです。

もちろん、お浄土の話も・・・

 

「間に合って良かった。阿弥陀さまに遇えて良かった・・」

チーちゃんはそう言ってくれたそうです。

その時、チーちゃんは、阿弥陀様の大きなお慈悲の温もりに

包まれていたに違いありません。

 

十月十一日、チーちゃんはお浄土に生まれて往きました。

「また、お浄土で会おうね。」

3人で交わした約束です。

 

 

    本願寺新報10月10日号「いのちの栞」原文のまま